矯正治療と抜歯

正治療で歯を抜く必要がある場合が多いです。抜歯はしないほうが良いということをみなさんも良く耳にすると思います。今回は矯正治療と抜歯について考えてみましょう。


正治療以外で抜歯が必要な場合として、虫歯が大きくなった、歯を支える骨がない、歯の周りの炎症がひどい、歯が途中で折れたなど、様々です。これらは病的な状態で、みなさんも抜きたくないけど仕様がないと思われるでしょう。逆に歯を残せる場合はできるだけ抜かずに残す治療を選択されると思います。


一方矯正治療で抜歯が必要ですと言われると、虫歯や歯周病になっているわけでもない健康な歯をなぜ抜くのと考えるでしょう。それは当然の反応と思います。


正治療で歯を抜くと説明される状況として、歯並びのでこぼこが大きい場合、前歯が飛び出している場合、生える予定の歯が並ぶスペースが足りない場合などです。どのケースも、それぞれの歯を適切な位置に動かすにはどこかにスペースが必要になります。


隙間を作る方法は、

  1. 歯を抜いて、そのスペースを利用する
  2. 歯並びの横幅を広げる
  3. 前歯を前に倒す
  4. 奥歯を後ろに動かす
  5. 歯の削って横幅を小さくする

などが考えられます。


つまり、歯を抜かなければ横幅を広げるか、前歯を倒すか、奥歯を後ろに動かしたり、歯を削ったりする必要が出てきます。横に広げるには限界があります。前歯を前に倒せば口元が前に出るので、口元を少し中に入れたい人、口元を前に出したくない人には選択できません。奥歯を後ろに動かすには限界もありますし、複雑な動かし方が必要です。場合によっては複数の装置が必要な場合もあるでしょう。歯を削るのにも限界があり、削りすぎると痛みが出ますし、歯が弱くなります。このように、それぞれの解決方法を選択できない、もしくは選択してもあまりメリットがない場合があります。


これらの解決方法を組み合わせれば歯を抜かずに並べることができると判断されたとき、次に考えるのが

  • その治療でかみ合わせが安定するのか
  • 治療期間の長さは

ということです。


安定しなければ元に戻るので、適切な治療方針とはいえません。治療期間については、抜いた場合に何年、抜かない場合は何年というように患者さんに提示し、選択してもらうことになります。


このように、矯正歯科医は色々な条件を頭の中でシミュレートして抜歯が必要かどうかを検討しています。私たちも抜かずに治せるなら抜かない治療計画を選択します。


抜歯の必要性については患者さんそれぞれで異なります。もし、疑問に思われるのでしたら歯科医師にお尋ねください。