昔:床矯正→今:アライナー矯正

一般歯科で矯正治療を受けたことがあると問診に記載される患者さんがしばしばいらっしゃいます。

 

今のところ、ほとんどが床矯正装置を使っていた感じです。

 

その後の経過を聞くと、良くなったが戻ったが1割程度、途中で中断したが4割程度、良くならなかったが5割程度の印象を受けます。

 

良くなってその後の経過も良好という人は相談に来られないので、全体的どの程度の人が良くなっていたのかは不明です。

 

自分が床矯正装置だけでどの程度の患者さんに治療が可能かと考えると、一般歯科医が床矯正装置だけ不正咬合を改善できるのはごく一部の患者さんに限られると思います。

 

ただ昔の状況を考えると、かなりの一般歯科医が床矯正のみを行っていたかとおもいます。

 

最近アライナー矯正をする一般歯科が増えています。私もアライナー矯正をしているので、アライナー矯正が悪いとは思っていません。床矯正治療よりよほど治療可能な患者さんが多いと思います。

 

ただ、本当に考えてほしいのは、床矯正もアライナー矯正も矯正治療に用いる歯の移動手段の一つに過ぎないということです。

 

矯正専門の歯科医師は治療を考えるうえで、第一に治療の目的は何なのか、次にその目的を達成するために治療のゴールはどう設定するのかを考えます。その次に初めて治療のゴールに到達するためにどういった手順でどういった装置を使用するのかを考えます。そのため、ゴールに到達するのに不利な場合、床装置やアライナーは選択肢から外します。ゴールに到達するのに不利な状況で床装置やアライナーを使用することは、ゴールの位置の変更を意味します。ゴールの位置の変更が容認できる状態ならよいですが、患者さんにとって容認できないゴールだったり、咬合状態や審美的にも問題がある場合は治療的に不適切と考えられます。

 

最近はアライナー矯正をする歯科医院が増えています。

 

アライナー矯正をすると勝手に歯がきれいに並んでくると誤解されている患者さんが多いと思います。実際には思った通りに動く症例は本当に、本当にごくわずかです。途中で作り直しが多く、歯がほとんど動かない、歯が倒れこんでくる、かみ合わせが深くなる、歯がかみ合わないなどなど、いろいろな困難に遭遇します。

 

私はもう10年ほどアライナー矯正をしているので、それら望まぬ状態に対してある程度対処できますが、それでも70人に1人ぐらいの割合で全顎ブラケット矯正への変更や、30人に1人ぐらいの割合で部分的にブラケット矯正を併用すること提案しています。

 

一般歯科医の先生は、成功するバラ色のビジョンだけでなく、失敗したらどうリカバリーするのかを考え、その手段を持ってからアライナー矯正を始めていただければと思います。

 

 

約5年ぶりの投稿

ご無沙汰しておりました。

前回の記事を見ると2018年が最後でした。

平成ですね。

 

その後に新型コロナによる世界的なパンデミック、日本の元首相の暗殺、ロシアによるウクライナ侵攻が起こるなど想像もつきませんでした。

 

新型コロナやウクライナ侵攻の影響で、一時期矯正の材料が入手困難となり、注文をしても何時入荷するか分からないという状況が続いていました。

 

マルチブラケットの患者さんで、ブラケットが脱離して、同じブラケットが入荷せず、入手できた違う会社のブラケットをつけざるを得ず、ワイヤーを曲げて微調整するということもありました。

 

今は矯正材料の入荷もほぼ平常に戻っています。

 

学会への参加も当初は中止、その後オンラインやオンデマンドでの開催となり、現在は会場で通常通りの開催になっています。地方在住の身としては、オンライン開催は交通費や宿泊費になり、またオンデマンド開催は後日好きな時間に視聴できるので、休診にすることなく大変助かりました。オンデマンド開催は今後も続けてほしいです。

 

またしばらく定期的の投稿を再開します。

 

 

デジタルセットアップ

正治療の計画を説明する時、歯科医が想定している治療後の歯並び、かみ合わせと、患者さんが思い描く治療後の歯並び、かみ合わせが可能な限り一致することはかなり重要です。


患者さんの思い描いたものと歯科医が想定していたものが乖離していると、治療後に「もっとこうなると思っていたのに、全然治っていない」となり、トラブルにつながります。


歯科医院によっては歯を並べた模型(セットアップ模型)を作られるところもありますが、かなり時間がかかるので当院では行っていませんでした。


セットアップ模型の代わりに、当院では治療後の歯並びの予測を以前はフォトショップで治療前の歯並びの写真を加工し、治療後の大体の歯並びのイメージ写真を見てもらっていました。


しかし、口の中の写真の加工では写真を撮った距離、角度によって歯の形や大きさが歪むため、大体こんな感じというものでしかありませんでした。


模型データの加工ソフト「Maestro 3D Dental Studio」で模型データを加工し、治療後の歯並びかみ合わせになるように歯をコンピューター上で配列し(デジタルセットアップ)、治療善の歯並びに重ね合わせてより正確にイメージできるようにしました。


フォトショップで加工する時間の約5倍近く時間がかかってしまいました。効率は落ちますが、フォトショップよりはるかに正確なイメージができるので、こちらに変更していく予定です。

滅菌器替えました

4月の改正で、感染対策をしっかりしていないと初診や再診の保険点数が減点されるようになりました。
これは10月分から適用されるので、10月までに対策を行い、厚生局に届出を行うことが必要でした。


私の歯科医院では以前からこの基準を満たしていたのですが、さらに感染予防対策を充実させるため、滅菌に使用している器械を入れ替えることにしました。

それがこちら、

測ったかのようにぴったりはまっています。


最近の滅菌機は外形がおしゃれですね。


ヨーロッパ基準EN13060のクラスB規格のオートクレーブで、以前のものより滅菌効果が高いです。
オートクレーブの規格にはクラスB、クラスN、クラスSがあるそうで、固形のもの中空のもの、たくさん穴が開いているもの、一重で包装しているもの、二重で包装しているものなど、すべてに対応して滅菌できる器械の規格がクラスBで、クラスNは包装されているものは滅菌できませんし、クラスSは包装されていても滅菌できますが、チューブなど中空のものの中までは滅菌することができません。


クラスBのオートクレーブは結構高価なので、歯科医院で導入しているところはまだ少ないそうです。

より安全な医療の提供ができるようになったかなと思います。

模型の処分と再製作

約4か月ぶりの更新です。

2か月ぐらい放置していた気分なのですが、4か月以上放置していました。

前回の記事は口腔内スキャナーでしたが、その後の経過についてご報告します。


口腔内スキャナーを導入し、今ではインビザラインのみならず、裏側矯正(ハーモニーシステム)、唇側からの矯正(インシグニア)にも使用を開始しました。

この口腔内スキャナーの使用方法を教えてもらうときに、模型を使用してスキャンの練習をするのですが、「これ、院内に保管している模型をすべてスキャンして、必要になれば3Dプリンターから出力できるようにすれば模型を廃棄できるのでは?」と思いました。

保険診療の模型は廃棄不可と言われそうな気がしたので(現在問い合わせ中)、自費診療の患者さんの模型を3Dプリンターで出力するところからはじめました。


まず最初に口腔内スキャナーで模型をスキャンし、


My aligntechのクラウドから、スキャンした模型のstlファイルをローカルに落とし、

模型データをMaestro 3D Dental Studioで開き、模型の台付け、

台付けした模型データを3Dプリンターについているソフトで開き、模型の角度を調整し、出力するためのサポートを付け、

3Dプリンターで出力、

完成品はこれ。


ピッチを100ミクロンに設定したので、片顎の出力で約10時間半。

模型の仕上がりは十分かなと思いました。

時間はかかりますが、平行模型を作る手間を考えると、その時間他の仕事ができるので楽です。


模型を出力できるめどがついてので、終了した患者さんから模型のデジタルデータでの保管に移行します。

iTero element導入

インビザラインによる治療を行っていると予定通りに歯が動かず、型をとりなおして、再度アライナーの製作が必要になるケースが多くあります。



型をとりなおす際は矯正治療の途中でとりなおすことになるので、精密な型をとるほど歯が痛くなります。



また、型の精度、石膏模型の精度によっては石膏模型の歯の位置と実際の歯の位置とにずれが生じることがあります。



そういったことを考え、口の中で歯の位置をスキャンできる口腔内3Dスキャナーを導入することにしました。



インビザラインに対応する口腔内スキャナーです。


型をとってオーダーするのに比べ、装着までのスピードが格段に速くなるという効果もあります。


今日から運用を開始します。

矯正のアルバイトの問題

矯正専門の歯科医院以外で矯正治療を行っている歯科医院はたくさんあります。


そういった歯科医院には、矯正治療のトレーニングをつんだ常勤の歯科医師がいる歯科医院と、外部から矯正歯科医を非常勤で勤務してもらっている歯科医院があります。


非常勤の矯正歯科医が矯正の診療をしている歯科医院ではしばしば困った問題が生じます。


患者と非常勤の矯正歯科医のスケジュールが合わなかったときの対応と、
矯正装置の破折、ブラケットの脱離、ワイヤーによるトラブルなどのトラブル対応などです。


例えば、非常勤の矯正歯科医の勤務が月1回で、その勤務日に患者さんのスケジュールが合わなければ、次回の診療予約日を延期することになります。
それにより治療期間が長くなることも考えられます。


トラブル対応の場合、多くは非常勤の矯正歯科医の勤務しない日に生じると考えられます。その際に常勤の歯科医が対応できれば良いのですが、対応しきれなければ患者さんはずっと口の中にトラブルを抱えたまま次回の診療日まで待たなければなりません。


非常勤で矯正歯科医を雇う場合は、常勤の歯科医師が応急処置のトレーニングだけでも積んでいただければと思います。